研修会 - 2015年度

「第20回全国大学ゴルフ指導者研修会開催される」
全国大学ゴルフ指導者研究会事務局 中島弘毅

 去る3月7日〜9日にかけて第20回全国大学ゴルフ指導者研修会が静岡県沼津市の沼津国際カントリークラブにて開催された。まずは、本研修会が全国大学体育連合の助成を頂き、全国大学体育連合との共催のもと、充実した研修会が開催できたことを報告し、御礼を申し上げたい。

 本研修会開催について全国大学体育連合のホームページでお知らせをして頂いたことにより、本年度も全国から多くの新規参加者を迎えることができた。また、本研修会の主催団体である全国大学ゴルフ指導者研究会の新規会員になって頂くなど、研修会のみならず、更なる組織の充実が図れたことは大きな喜びであった。

 本研修会の目的は、「大学におけるゴルフ教育の充実と発展に寄与するため、ゴルフ技術、理論、指導法について研究討議を行い、技術力と指導力の向上を図る」ことである。今回の実技研修内容は「初心者に対する指導法」、レベルアップ講習として「バンカー及びパッティングの技術講習」「コースでの課題別・実践研修」「コースでの総合技術の向上とコースマネージメント研修」であった。また、夜は講義及び情報交換の時間に当てられ、大澤先生を講師にお招きし「佐藤棟造日記にみる北海道のゴルフ濫觴〜小樽カントリー倶楽部の歴史と棟造のゴルフライフ」と言うテーマで日本における初期のゴルフクラブの誕生を概観しながら小樽カントリー倶楽部の創始者である佐藤棟造が残したゴルフ日記を手がかりに昭和初期の北海道におけるゴルフの発祥と発展と佐藤棟造のゴルフライフについてご講義を頂いた。日本の初期のゴルフ場は、ゴルフ愛好家によって創られて行く様子を詳細に学ぶことができる興味深い内容であった。

 その後の情報交換会では、産能大学の江口先生と芝浦工業大学の浜野先生よりそれぞれの大学で行っている授業形態とこれまでの経緯について、また、エチケット等を含めた指導内容についてのお話を頂いた。両校とも宿泊型の集中授業を取り入れており、その中でゴルフ技術及び知識の修得のみならず、ゴルフの種目特性を念頭においてのスポーツマンシップの醸成、人間関係の重要性と社会人基礎力の向上などを合わせて求めるなどの現代の学生状況を背景に、大学における体育授業の果たす役割の大きさを改めて認識させてくれるお話を頂いた。大学におけるゴルフ授業は、学内における打撃練習のみの授業から、本コースにおける宿泊型の集中授業と多岐に渡る。当然のことながら授業形態によって学生が学べる内容も左右されることが確認され、教員もしくは、大学が何を学生に修得させたいのかを明確にした上で、最も適した授業形態を設定することの重要性、または、与えられた環境の中で最大限の効果をあげる為に、教員が考えるべきことは何かを改めて考えさせられる良い機会となった。

 また、今回も今後学内でゴルフ授業を持つ可能性があるとのことで、そのための指導技術及びスキルアップのために若手教員が多数参加していた。この様に指導者においても大学時代にゴルフ部に所属していた教員よりも、大学に就職してからゴルフ授業を担当するに伴い、はじめてゴルフに接する教員も相当数おり、様々なレベルの指導者が存在する。特に、・スポーツ系学部を有する大学においては、自分の専門に終始することも出来るが、教養科目としての一般体育授業を担当する多くの教員は、自分の専門種目にとどまらず、大学の施設の状況、学生及び社会的ニーズから種目を設定することになり、新たに技術、知識を修得、向上させる必要に迫られ、多くの時間を割いて授業研究をすることが求められる。

 特に実技科目においては知識のみに留まらず、技術の修得も求められ、学生に師範できる程度の技術レベルと運動結果が起こる原因と改善のためのポイントを察知し、指摘できる能力も求められる。更に、合宿型のコースレッスンを含めた授業を行なう場合には、練習場とは違う多種多様な状況下での打撃技術が求められるなど、コースでの十分な経験とそこでのマナー・ルール、そしてコースの戦略の立て方、更にはコースに隠された設計者の意図についても解説できることが求められる。

 この様な中で、日々、研究、教育、大学運営等に関わる仕事等におわれ、種目特性からも実践的な練習時間及び機会がなかなか取ることが出来ない教員の要望に応え、本研究会では、現場で生きる実践的な技術、知識の修得を目指した講習と各大学での授業展開、考え方、企画運営等の情報を交換し、参加教員がすぐに大学で使える、生かせることをモットーに研修会を開催している。

 第一日目の研修は、林朋芳プロ(愛鷹シックスハンドレッドクラブ所属)によるゴルフ場併設打撃場でのレッスンが行なわれた。昨年に引き続き、雨天の中でのレッスンであったが、参加者の技術習得に対する熱意は、午前中までの大雨を少雨にさせ、プロからの初心者指導における注意点を聞く真剣な眼差しに溢れていた。また、毎回の参加者に対するプロによる個別のレッスンは非常に好評であり、的確な指摘によってすぐに結果につながる喜びは研修会参加者の満足感を高め、雨の中にも拘らずプロにコメントを求める多くの参加者の姿があった。

 打撃練習場に併設されたバンカーにおける練習方法の実践とパッティンググリーンにおけるパッティングの練習方法についても多くの示唆を頂き、2時間はあっという間であり、もう少し時間欲しいとの声が聞かれた。

 林プロによる打撃指導の中でのミズノメソッドの紹介、また、その指導方法によって地元の多くの高校が取り入れているゴルフ授業の中での実践例が示された。短時間でピッチング、7番、そしてドライバーまで打たせてしまうとの話を聞き、初心者指導方法についてまた新たな学びを得た教員が多数いたに違いない。

 夜は、懇親会が開催され、普段なかなかお会いできない先生方と楽しく談笑し、また、新たな交流、親交を築く良い機会となった。また、食堂での懇親会の後、別室において引き続き開かれた懇親会の席上では、ゴルフに関する議論、情報交換で大いに盛り上がっていた。飲みながら食べながらのアットホームな雰囲気は研修会の雰囲気そのものであり、夜の自由参加のこの場にほぼ全員が集まったことは、何よりもの証であった。

 この様な宿泊型の研修においては、一日どっぷりと一つの種目、課題に浸り、昼間の研修時には聞くことが出来なかった疑問、また、日常及び昼間の研修時に抱いた疑問を率直に出し合い、指導、コメントを頂く時間を楽しく取れるのがこの夜の時間の大きなメリットである。時間が過ぎるのも忘れて語り合いながら、明日の研修を楽しみに11時にはお開きとし、名残惜しみながらも各自各部屋へ戻っていった。

 二日目は、イン、アウトコースに分かれ、大澤先生と鈴木先生による各組3ホールずつのラウンドレッスンが行われた。「自分の力量と次のことを考え、どこを狙って打てば良いか」「どこに落とそうとしているか」「どのようなボールで寄せようとしているか」「どのようにコースを読むか、読んでいるか」「狙い通りに行かなかった時の起こりえる悪いパターンをどの様にイメージしているか、そうならないためには、どこに打つことが次に繋がるのか」などなどのコースに仕掛けられた錯覚現象に対する対処の仕方、考え方などから、それによって起こる自分では気づかないアドレス、方向性等に対する指摘を頂くなど、その状況に応じた様々な個別指導が行われた。「的確なワンポイントレッスンがスイング、アドレスの修正に有用であった」「コースの状況を見ながらプレーすることの大切さを学んだ」との声が寄せられ、昨年に引き続き練習場では修得できない多くの気づきを頂いたことに対する高い評価が寄せられた。

 三日目は、「実戦による打撃技術の総合研修、コースマネージメント研修」がテーマであった。キャディーはつかず、カートに設置されたナビ情報を元にコースの状況、ポイントについて考えながらのラウンドプレーを行った。距離の読み方、ねらいどころ、刻み方、ボールの転がり具合等、如何に正しく状況を把握し、先を読み、計算をしながら正しい選択と決断によってプレーをすることが結果につながるかを意識しながらコースマネージメントについて実践的に学んだ。

 先に述べたように本コースに出ての授業となると教員にとってもそれなりの知識と技術が求められる。しかしながら、昨今の大学教員を取り巻く状況として若手であるほど研究を優先せざるを得ない状況があり、実技研修を十分に行う時間が取れない。授業以外に研究、学内業務、社会的活動に追われる大学教員にとってコースに出てラウンドプレーをする機会を確保することは、時間的条件のみならず、費用的にも、場所的仲間的条件においてもなかなか難しい。その様な中で、欠かすことが出来ないコースにおけるラウンドプレーの機会を提供し、打撃場では得られない様々に異なる自然状況の中で、如何にそれを読み解き、そこにある課題を解決するかの実践的研修は必須のものである。この様な研修によって正確にボールを打つと言う技術を身体操作の面から思考することに止まらず、「自然」と「自分」を相手に、如何にしてその状況を読み解き、解決策を見つけ対応して行くかを併せてレクチャーしてゆくことが、コースラウンド型の授業の有用性と質の高い実技講義への提供となる。

 本研究会では、本研究会が主催する研修会に2回以上参加し、理論を学び、実技テストに合格した参加者に対して大学ゴルフ指導者としての資質を保持するものとして認定証を授与している。本年は、2名の参加者が会長より認定証が授与された。

 今回参加いただいた方々からは、他大学との教員、ゴルフを担当している教員との交流及び情報交換が出来たことが有益であったと言う多数のコメントと共に更なる研修時間の確保を望む意見も寄せられた。また、プロ等、ゴルフのスペシャリストとの接点がもてたり、指導を頂けた事が有益だったとする意見、ラウンドレッスン及びコースマネージメントがとても有益だったとする意見も多数頂いた。

 今回の会場はグリーンが特に難しいコースでもあったが、練習環境においては充実していたと思われる。宿泊施設においても参加者の満足度は高く、次回も参加したいとのコメントが多く寄せられた。今回出された意見を尊重し、より現場に生かせる、参加者の満足度を高められるような研修会を今後も開催すべく努力して行きたいと考えている。

 改めて、遠くからお忙しい中、わざわざ本研修会に参加してくださった先生方に感謝を申し上げると共に本研修会を開催するにあたって助成を頂いた全国大学体育連合、そして、本研修会を開催するにあたり様々な便宜を図ってくださり、研修会の成功に多大な貢献をしてくださった沼津国際カントリークラブの林義正支配人、スタッフの皆様並びに宿泊及び講義会場としてお世話になったニューウェルサンピア沼津の皆様方に衷心より感謝を申し上げます。


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